気の滅入るような薄曇りの空。

表出した肌に吹き付ける冷たい風。

足裏で踏みしめる砂利。





年暮れ間際の午後





地続きの場所で砂利を踏む男と

そろいのような黒の上下。










「…聞いてなかったぞ」

「ん…ああ」

「終わったのか、色々」

「まだだ」

「最後まで、いていいか」

「好きにしろ」





脇を走り抜ける車。

遠くに見える色彩溢れるショッピングモール。

片手に持った薔薇。





「そう言えば」

「…?」

「久し振りだな」

「そうだな」

「…誰に聞いたんだ?」

「電話が来た」

「あいつか…」

「……聞いてなかったぞ」

「言わなかったからな」





列を成す黒衣の人間たち。

背を向ける男の捨てた煙草から立ち上る煙。





「俺だって、知らない人間な訳じゃなかった。むしろ…」

「ああ」

「………聞いてなかったぞ」

「…何で、泣くんだ」

「そっちが、泣かないからだろ」

「ああ」





髪を舞い上げる木枯らし。

服地から浸透して来る冷気。

変わらない気配。





「…それ、」

「好きだっただろ、薔薇。だから」

「…悪いな」

「俺も、好きだった」

「ああ、解ってる」





遥か遠くを見つめる横顔。

寝不足で少し濁った視線。

空虚な苦笑。





「最後まで、いていいか」

「……好きにしろ」





とっくに沈んだ夕日。

まだ晴れない空。


二人分の涙に濡れた薔薇。






























年暮れ間際

誕生日を過ぎてすぐ。









































愛する人の愛する人が死んだ日。



























































2003.01.21

どうにも暗いものばかり書いているように思われますが
そうでもないんですよ、
ネタはラブいものばかり浮かびます。
しかしこればかりはご容赦下さい。

この文に関しては私の中で整理がついたので書けたというか、
整理をつけるために書いたというか…必要なものだったのです。
散文で申し訳ないのですが…





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