バラム心中物語











「ん〜暇だね〜」

「あ〜暇だな〜」


昼下がりの食堂のど真ん中。
ゼルは水。セルフィは特別に作ってもらった特大のパフェを目の前にぼーんやりとしていた。
一般の生徒は授業の時間で、他のSeeDも何かと忙そうだが、2人は依頼主からドタキャンを喰らって暇満開なのである。

SeeDが暇なのはいいことだ、しかし突然降って湧いた余暇を2人は持てあましていた。
それはもう、観葉植物の葉の数を思わず数えてしまうほどに暇だった。


「訓練施設も整備中ってついてねーよなー…」


所持金が底をついたために水しか飲めないでいるゼルがグチグチと文句を垂らす。
そこにツカツカと長身で白コートの男がやって来た。


「あー!サイファーだ!サイファー!!!」


ぶんぶんと大きく手を振り、キョロキョロと辺りを見回す男の気を引く。
げ、と身構えるゼルの気持ちを余所に、気を引かれた男はノコノコと近づいて来た。


「よー、スコール知らねえか?」

「今日は見てねぇな」

「あ、ねーねー、サイファー、あたしずーっと聞きたいと思ってたことあるんだけど、いい?」


ニコニコ笑顔のセルフィに切り出され、断れる人間はこのガーデンにはいない。
サイファーももれなく。である。


「あんだよ」

「何でスコールとつきあおーって思ったの?」

「ブホハァー!!!」

「つめたいー」


突然のセルフィの発言にゼルは思いっきり水を吹き出す。
それはもう綺麗な霧状であった。

いやそれはどうでもいい。
それよりもそんなことをこんな人気のある場所で…!!!


「ああ?あーそりゃおめえ、人命救助だよ」

「人命救助ォ?」

「付き合ってやらなきゃ死んじまいそうだったからな」


ニヤリと笑って返された答えは間違いなく、ノロケだった。
真剣に聞いた自分が馬鹿だった、とゼルはガックリと肩を落とす


「…へー…」

「んもーサイファーたちラブラブだね!コレあげる!!」

「ウグッ!!!」


そう言ってセルフィはパフェに刺さっていたウェハースをサイファーの口に突っ込んだ。
喉の奥まで細長いウェハースを突っ込まれたサイファーは涙目になっている。
それでもセルフィ相手に怒るに怒れずボリボリと租借する様はいっそ哀れである。


「ふぉふぇはへはほ」

「うん」

「ほいはーは」


相変わらずボリボリとウェハースを噛み砕きながら踵を返す。
コートを翻して去ってゆく姿は様になっているが、セリフは様になっていない。
フガフガと何事かを呟きながらサイファーは去って行った。






















「おい、サイファーを知らないか?」


何だかんだと時間を潰していると、次にやって来たのはスコールだ。


「さっきまでココにいたぜ」

「あ、ねーねースコール!聞きたいことあるんだけどいい?」


ニコニコ笑顔のセルフィに切り出され、断れる人間はこのガーデンにはいない。
このスコールももれなく。である。


「何だ?」

「何でサイファーとつきあおーって思ったの?」


何を思ったか、同じ質問を繰り返すセルフィ。
もうツッこむ気力もないゼルは傍観に徹している。


「人命救助だ」

「えー何でー?」

「付き合ってやらないと死にそうだと思ったからな」


さらりと返された答えは…またもやノロケであった。























「結局どっちがホントなのかなー」

「知らねー」


眉をしかめながらひとりごちるセルフィの声に被ってスコールがゲホゴホと咽せる声が聞こえる。
もちろん、質問に答えた直後セルフィから『ラブラブだね〜』とアイスをたんまり口の中に突っ込まれたせいである。
喰いきれないなら頼まなければいいものを。


「ね、結局つきあえなくって2人とも恋煩いで死んじゃったら、心中になるのかな?」

「さーなー」


咽せながらヨタヨタと去りゆくスコールの背中を見つめつつ、ゼルはセルフィのパフェを横から奪い取った。







そんなこと、知るか!!!































2004.05.11

…と言うことで珍しくサイハーさんとスコールがメインじゃない(?)話でした。

『人命救助』のエピソードを使いたかったので…いそいそと勢いで書きました。
書いているうちにセルフィがどんどん前面に出てきてしまい違う話になりかけたので
慌てて修正を加えたり…。

とりあえず、お惚気2人組は海に沈んでください(酷)
特に無意識で惚気るスコールさん(笑)


例にも依って…元ネタの解る方すみませ…(そんなんばっかり)





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