幼馴染みへ























幼馴染み。



と言われてまず思い浮かぶのは、
今ここにはいない男の顔だ。



言葉の意味を考えると、本当に幼馴染みと言えるのは
一緒に闘った仲間達なのだろう。
蘇った記憶の中にも幼い頃のあの男と遊んでいる記憶は非常に少ない。


それでも、俺は何故かあの男を"幼馴染み"だと思っているらしい。





ここを出て行ったあの男とは去年ばったり街で出くわして、
少し話して、すぐに別れた。
仲間からはどこかで見掛けた、話をした、等と言う情報を耳にするが、
少なくとも俺の持っているあの男の最新の記憶は
丁度一年前のものだ。


昨日、仲間達の話題の中で、あの男の誕生日を初めて知った。
もうとっくに過ぎてはいたが、それを聞いた途端、
何故かその日を祝ってやりたくなった。

我ながらとても珍しい衝動だ。



かつての恋人にすらそんな衝動はなかった。

何故だろう、何故だろうと一日中考え抜いて辿り着いた結論は、

どうやら自分で思っていたほど、
俺はあの男のことを嫌いではなかったらしい。

と言うことだった。





いやむしろ。
考えていることがよく解らなくて
顔を合わせる度に腹の立つことしか言わないあの無駄にデカイ男のことを、
結構好きだったんじゃないかと言うことに気づいてしまった。





いや、結構なんてものじゃなくて、
実はものすごく好きだったんじゃないかと言うことにまで、

気づいてしまった。













ソファに腰を下ろして携帯を開き、
いつまでも慣れないボタン操作を黙々と繰り返す。




















『久し振り、一年ぶりだな。


少し遅くなったが、誕生日おめでとう。


随分と連絡を取っていないが、
俺はあんたのことを忘れたことはないし、
いつまでもあんたを大事な幼馴染みだと思っている。
それだけは覚えていて欲しい。



それじゃあ、いつかまた』




















それだけを打って、送信した。



俺の方の携帯は今日一杯で解約だから、
男からの返信はない。


それでいい。


俺が多少スッキリしたからそれで満足だ。




俺があの男を好きだろうが何だろうが、
そんなことをあの男が知る訳もない。


もしかしたら俺のことなんて思い出すこともないかも知れない。




だから、それでよかった。












いつか会ったら面と向かって言ってやって、
唖然とする顔を見るのも面白いかも知れない。


だから、今は幼馴染みでいい。
























送信を終えた携帯を眺めていると、日付が変わった。


























「………誕生日おめでとう。それから、メリークリスマス。幼馴染み」





















































2003.12.23

…と言うわけで、少し遅くなってしまいましたが
お誕生日おめでとうございました、サイハーさん!!

書いてるうちに日付が変わってしまったので
無理矢理クリスマス混入。
サイハーさんごめん…一緒にして(笑)





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