何時の頃からか、言われ続けている言葉がある。

曰く、

「カッコいい」とか、
「手足が長い」とか。
「声がいい」なんてのも言われたし、
「背が高い」、「睫が長い」。

……最近…「綺麗になった」とかも言われるようになったし。


そう言う言葉に、俺はどんな反応を返せばいいのだろうか。










褒められた際の対処についての考察










別に、褒められるのが嫌いな訳じゃない。
戦闘能力や成績のことを褒められるのは勿論嬉しい。
そうなるように努力して来たものだし。

だが、別に努力しなかった所を褒められたら…
何と返せばいいんだ?
…否定も肯定も非常にし難いし、感謝の言葉を返すのも変だ。
しかし、何も言わないのも問題があるような気がするし…。


「お!スコールお早うさん。今から朝メシか?」

「ああ。…お早うゼル」


………。
今、褒めたらゼルはどんな反応を示すだろうか…。
参考になるかも知れないな。よし。

「…ゼルはいつも」

騒々しいな。
…違うな。これじゃ褒め言葉じゃない…。

「…元気だな」

「おっ?おう。それが俺のとりえだからな!」

「そうか」

「おうよ!つーか何だよ急にそんなこと言って。どんな風邪の吹き回しだぁ?」

………。
矢っ張り騒々しい…朝から付き合うのはキツイな。

「いや、もういい。じゃあな」


…それにしてもあの反応だと、
「足長いね」と言われて「それが俺の取り柄だからな」…って言うのか?
俺が?


………………嫌だな。

却下。

















「あら、スコールお早う」

「ああ」

「朝からトーストだけ?保たないわよ」

「…そっちこそ」

それ、ダイエットメニューだよな?確か。
どうして女子ってのはダイエットしたがるんだろうか…。
普通の食生活に不都合があるんだろうか?

「ダイエットしなくても痩せてると思うぞ?俺は」

「あら…どうしたの?いきなり褒めるなんて」

褒める…?
ああ、今のも褒め言葉に入るのか。

「別に…キスティス美人だし」

「ふふ。…ところであなた単位落としてる科目あったかしら?」

「いや、ない」

「あら、じゃあ本当にお世辞じゃないのね」

「………」

「冗談よ、冗談。それじゃ、遅刻しないようにね」

絶対、信じてないな…あまりお世辞じゃなかったんだけど……。

…そうだな。
あれぐらい余裕を持って振る舞えれば問題なしだ。
でも俺がやっても…滑稽だよな…。
変にやりすぎると悪女みたいだし。

………不可。

















「あっ、スコールおはよ〜」

「ああ、セルフィか。お早う」

「ねぇねぇ今日訓練施設使えないってホント〜?あたしレベル上げたかったんだけど〜」

「……そうなのか?知らなかった」

…そうだ。
セルフィなら良い参考になるかも知れないな…。
よく喋るし。

「セルフィって、何か可愛いよな」

全体的に小さくまとまってる感じが。
それでその小さくまとまってるのがちょこちょこ動き回ってる感じが。

「はッ!?え!?何言ってんの!?」

「いや、見たままを……どうした?顔赤いぞ」

「あ、赤くなんかなってないよ!急に何やねんもぉ〜」

「セ、セルフィ?」

「あッ!あたし用事あったんだった!じゃねスコール!ばいばい!」

は、早い………………。

……逃げられた…。
何だったんだ…?
いや、褒められた時に妙な気分になるのは解るが、
真っ赤になって逃げるか?普通…。
……逃げたら意味ないよな。

問題外…。





















……ダメだ。全然参考にならない。

どうするか…まだ他の人間にも試してみるか。
でもうろうろしてると見つかるし…。
それとも素直に諦めるか?
……諦めるのは嫌だな…。
この先ずっとこのままなんて、神経が保たない。
何とかして早急に手を打たないと…。


「よーお、指揮官殿」

………う…。
見つかった、か…。
こいつに一番見つかりたくなかったのに…。

「無視ですかー指揮官殿」

「…何の用だ?」

「いや何、どこぞの指揮官殿が朝っぱらから褒め殺して歩いてるって聞いたもんでご相伴に預かろうと思いまして」

「な…別に褒め殺してなんか…」

「何にーも聞こえまセーンー」

………拗ねてるな…またガキ臭く…。
まぁ、ここの所避けてたからな…。
でも避ける理由はどっちかと言うとそっちにあるんだけどな。

「いーじゃねえか。滅多にない機会だし?褒めてもらいたいんもんだよなぁ?」

「何で俺があんたを…!」

「それとも何か?この5日間俺を避けまくってくれた正当な理由、素直に吐くか?」

正当な理由…?
そんなの、あんたが俺を所かまわず褒めるからだろう!
毎日毎日毎日飽きもせず!
だからそれにどう答えていいか解らなくてそれがストレスになりそうだったから避けて。
その間に良い対処方法を探そうとしてたんだよ!!

……なんて素直に言えたらどんなにか楽なんだけどな…。

「解った。褒める」

「おう、来いよ」

…くそっ、こうなったらコイツの反応を参考にしてやるか…。

しかし…一体コイツのどこを褒めればいいんだろうか。
そうだな…まずは俺が言われたことと同じ事を言ってみるか。
それが一番参考になる筈だよな。多分。

「あんた…かっこいい…よな」

「おう。で?」

「背、高いな」

「見りゃ解んだろ」

「足とかも長いし…」

「そりゃオレ様だからな」

…………駄目だ。
日々を無駄すぎるぐらい自信満々に生きてるコイツには何を言っても効かない…。
大体からして何で俺がコイツを褒めてやらなきゃいけないんだ…。

「あ?もう終いか?」

「………」

「当たり前のこと言ったって褒めてるとは言わねんだぜぇ?指揮官殿」

……うるさい。
しかもその笑い。
あんたのその笑み最高にムカつく……。
いや、ここでコイツの挑発に乗ったらそこまでだ。落ち着け。
……ここは矢っ張り相手が普段気に掛けていない所を突くのが効果的なんだろうか。

「ホントに終いかぁ?何だったら俺の一番好きな所でも上げてみろや」

だとしたら…どこだ?第一コイツどこに気を掛けててどこに気を掛けてないのかさっぱり解らない。
…今、コイツ何か言ったか?言って、ないよな。
どうすれば…いや、思い出せ。今まで言われた言葉の中に必ずと言っていい程含まれている単語があった筈だ。
………。
…そうだ。"羨ましい"だ。
なら俺がコイツに対して羨ましく思っている所を上げればいいのか。
今まで口に出したことがない所で、俺が羨ましく思っている所…。

……………。



「…サイファー」

「あ?」

「あんたのって、デカいよな」






「……………」

「……………」

「……………」

「……………」

「……………」






……あんた。顔、面白いな。
顎外れないか?

「サイファー?」

生きてるか?固まってるぞ?
…おい?

「………スコール」

「どうしたんだあんた急に」

「てめぇ、誘ってやがんな…?」

「は?」


……………。
……………!!!!

そう言えば、俺、今何か変なことを口走った、ような…。
嫌な予感が…ってまさか…。

…う、その笑い。
ああ、やばい。墓穴掘ったか…?


「それならそうと早く言えばいいのによ…」

「ちが、今のは勢いで…この、放せ!」


やっぱり…!
コイツ…コイツ最低だ!!

「簡単に盛るな、このケダモノ…!!」

「んー?チューしてほしいって?」

「〜〜〜〜〜〜〜!!」


ああもう、最悪すぎる。



もう絶対、金輪際、サイファーのことは褒めない……。
























……ちなみにこの後のことは推して知るべし、だ。



































2002.04.19

ううう、結構な難産でした。
急いで書いた上にいつもと違う書き方をしたのでアワワなことに。
反省ばかり目立つ作品になりました…。

……ところで…いつも述べるの終わりに記されている日付は「書き始めた日」になっております。
どれだけかかっているかの目安ってことで。





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