「……ふぅ」


大分ずれ込んでしまった仕事を全て消化して、硬くなってしまった背を伸ばしながら腕時計を見ると、
デジタルの数字がAM6:59からAM7:00に変わるところだった。



















開く























いつの間にか、あいつの誕生日になってたんだな。



仕事に夢中で全然気がつかなかった。
……忘れることは決してないにしろ。

まぁ、気がついてもつかなくても別れてしまった今誕生日も何もないんだろうし、
祝いたくともあいつの所在すらつかめない今、どうにかしたくてもどうにもならないのが本当の所。

あんな妙な別れ方をして。
あいつは行方が知れないし俺は指揮官としての仕事が忙しくてあいつのことに時間を割けないし。

それでも、会いたい。


中途半端な気持ちで世界を救ったこととか、それが原因であいつが手配されているこの現状を打破できないもどかしさとか、
あいつに本気で殺気を向けたからとか、、あいつのプライドを粉々にしたからとか。
あいつがどこにいるのかわからないとか。あいつを一番追いつめたのは俺なんだろうな、とか。
気まずい原因は多々あるけれど、その気まずさとか現状とかそれ以上に、


……もう一度会いたい。






それでもあいつの誕生日に、あいつを探しに行く時間すらとれない自分がいる。








「……誕生日なんでしょ?」

「指揮とか任務とか、全部投げて会いに行けばいいじゃない」



昨日、ホットラインで電話をかけてきたその馴染んだ声を思い出し、
その声に背中を押されて立ち上がった。



誕生日だからとか、そういう特別な理由なんかじゃなく、
ただ、あいつに会いたいから。



当たり前のようにあいつの側にいられた時の空気。
あいつと剣を交える度に生まれる喜び。


あいつの黙ってれば精悍な顔つきとか、
俺との身長差とか、
寝起きの掠れた声だとか、
いつも子供みたいに高い体温とか、
あいつが少し前を歩くと見える広い白コートの背中とか、
俺の髪を掻き混ぜる厚い手のひらとか、
抱き寄せられてぶつかる胸板の熱さとか、
いつも羨ましく思っていたその眼の色とか、
おどけて片眉をつり上げる仕草とか、
俺の記憶の中であいつを構成するものすべて、



取り戻しに、行く。



未練がましいとか、しつこいとか。あいつは言うかもしれないしもう恋人とかいるかもしれない。
でも、このまま一生会えないなんて考えたくもない。


ただ会いに行くんじゃなく、
話しに行くだけでもなく、
声を聞くだけでもなく、
ましてや姿を見るだけなんてとんでもない。



俺はあんたを、迎えに、行く。
この行動を後で後悔することになったとしても。
俺にはあんたを逃がさないことだけが重要だから。







デジタルが1分2分と数字を進めるよりも早く。
あんたに会えなかった分募った想いと、
……これから訪れるであろう未来への不安、希望を抱えて。


あんたを迎えに行くために。





俺は今、このドアを開く。











開く。





















開く─────。







































「待ってろよ、サイファー。……誕生日、おめでとう」




























































2001.12.22 07:50


はわ〜。何とか出来…。
この述べる、「想う」を書いたときにもう原文は出来てたのですが、今回にあたりなんとなく修正… 。
…を加えたらこんなに遅く…。ひぃ。

さぁ、これから反省会です。(とぼとぼ)





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