心臓 「なースコール」 「………」 コイツは本当に俺のこと好きなんだろうか。 久々の休日に俺の部屋を訪れたスコールの、あまりに素っ気ない態度に俺はちょっとがっくり来ていた。 コイツが素っ気ないのは今に始まったことじゃないし、俺だって自分のことが忙しい時はコイツのことをほったらかしたりもするから文句は言えないが、 やっぱりそれでもがっくりだ。 普通なら恋人の部屋に来たりしたら、緊張したりとか何かするもんだろう。 まあ、そんな初々しい反応なんざ期待しちゃいないが、 これでも一応付き合いたてのはず。 しかし部屋に入るなりソファに陣取って声掛けられてもシカトしてソファで雑誌の方に夢中ってどんなもんだ。 「シカトすんな」 「コーヒー」 しかも要求だけはしっかりしてると来たもんだ。 ソファから見える後頭部を思わずぶん殴りたくなるが、我慢だ。 殴ったら即喧嘩直行だろうし、喧嘩も嫌いじゃないが折角来たコイツを帰らせるのも何となくもったいない。 とりあえず適当にインスタントのコーヒーを入れてテーブルに置いてやる。 ちなみにミルクは1個で砂糖は3杯だ。 「まずい」 コレはそのコーヒーを啜った奴の発言だ。 やっぱり殴りたい。 カッカして来るが、やっぱり我慢だ。 怒りを抑えながらスコールの隣に座ってみる。 隣に恋人が座ったってのに相変わらずコイツは無反応だ。 ひたすら雑誌の字を追うのをやめない。 コイツが好きにするなら、俺も好きにするしかない。 とりあえず一旦立ち上がって、スコールの両脇に手を入れてよいしょと持ち上げる。 「何だ!」 「おー軽い軽い」 ひょいと猫みたいに持ち上げられたのが嫌なんだろう。 スコールがわたわたと暴れ出す。 逃げ出される前にスコールを持ったまままたソファに座り、 足の間にスコールを座らせる。 そのまま薄い胴に両手を回してぎゅーと抱きしめると、抵抗はいっそう激しくなった。 腕を引っ掻かれるわ、足は踏まれるわ。 そんなに嫌か。 「はーなーせー!」 「お前のわがままいつも聞いてやってんだからたまには俺の好きにさせろ」 バシバシ雑誌で叩いて来るのを避けながらそう言うと、 わがままを言ってる自覚はあったのかスコールはガーガー言うのをぴたりとやめた。 長い沈黙の後、ぺらと紙をめくる音が聞こえて、スコールが観念したのを知る。 ふー、と長く息をついてスコールの肩に頭を乗せた。 息を吸うとスコールの匂いがする。 すげえいい気分。 俺が猫だったらきっとごろごろ言ってるだろう。 じっとそのままでちょっとうとうとしていると、 抱きしめた腕と首に押しつけた耳からスコールの鼓動を感じた。 ことことと鳴るスコールの心臓が動いてる音。 そういえばこんな風にじっくり人の心音聞くことなんてなかったなーなんて思いながらじっくりそれに耳を澄ませていると、段々本当に眠くなってくる。 本気でうとうとしていると、心音に異変が起こった。 ことこと小さく感じるだけだった鼓動が、何だかだんだんでかくなる。 どんどんでかく速くなって、抱きしめた身体の体温すら上がって来た。 しまいにゃ心臓が飛び出して来るんじゃねーかってくらい激しくなった。 腕に心臓が当たってるような感じすらする。 何だかそれにつられてこっちの動悸まで激しくなった。 ドックドック言ってる身体から身を離すと、 スコールの耳が真っ赤になってるのが見える。 それにつられてやっぱりこっちも耳まで熱くなった。 「お前、案外俺のこと好きだよな」 「うるさい」 2006.11.03 寝てる猫の胸に耳を当てて心音を聞くのが好きです。 起きると途端にぐるぐる言い出すので聞こえねーぜンナロー!てなります(笑) そういうときは胸に手を当ててドキドキ言ってるのを楽しみます。 たまんねー! あまえるサイファーさんが書きたかった短い作文でした。 |