話半分

























最初にあったのは、強烈な存在感。







近くにいるだけなのに落ち着かない。

視界に入る度に、気配を感じる度必要以上に意識した。

声をかけられ、すぐ側に立たれるだけで全神経がそっちを向く。

そのうち周りの会話からその名前が挙がるだけで反応してしまう自分がいて。

ふとした瞬間。俺はあいつに必要以上に強い感情を抱いていることを自覚した。





けれどもその感情は強すぎるが故に俺には理解し難くて。

正直に人に相談して意見を仰いでみたところ、返って来た答えは




"好きなんじゃないの?"








ああ、そうか。

それなら説明がつく。

俺はあいつのこと好きだったんだ。


納得した。






納得ついでに、告白した。

俺の言葉を聞いたあいつは照れたような、嬉しそうな顔をして


"片想いだと思ってたから嬉しい"


そう言って笑う。

嬉しいのか?

ああ、嬉しいな。








お互い好きだから付き合い始めた。

俺達は元々性格が正反対だったから何度も怒鳴り合って

それと同じぐらいセックスしたし、それ以上キスもした。

あいつと触れ合う瞬間はいつも気分が高揚して、俺がどれだけあいつを好きか実感できる。

けどあいつは浮気性で他に何人も愛人作るから

腹の底からムカついて殺したくなる時もある。

その度、「愛がなきゃ怒れない」なんて言葉を思い出して。

つまり俺はムカついて殺したくなるくらいあいつを好きってことだ。

なんとも悔しいことだが俺はそれを否定できない。

一緒にいる時間は、いつもこれでもかって程満たされていて。





あいつが本当に好きだと思う。

視界に入る度、その姿が。

気配を感じる度、その空気が。

声をかけられると、その声が。

側に立たれると、その横顔が。

周りの会話からその名前が挙がるだけで、その存在が。

こんなに好きでいいのだろうか、なんて不安になるほど。

俺はあいつが好き。


































ある、朝。





夢を見た。



















俺とあいつが肩を並べて歩いていた。

俺はそれを眺めていた。

そこには恋人同士だけが持ち得るような、何とも穏やかな空気に満ちていた。

あいつが俺に笑いかけた。

俺もあいつに嬉しそうに笑ってみせた。

ああ、俺はあいつにあんな嬉しそうな顔見せてたんだな。




そう思ったら、目が覚めた。









顔を洗おうと洗面台に向かい、さっきまでの夢を思い出して

鏡を見る。












鏡に映った

俺の顔に浮かぶ表情は、


まぎれもなく、




















冷笑。

































気づいた。


…絶望した。






















ああ。




そうじゃなかったのか。

間違いだ。

どうすればいい。


何てことだ。







俺は、

あいつを。




































嫌いなんじゃないか。





































…………。

























































2001.11.15



北さん?なんですかコレは!私は許しませんよ!?
ひぃ!お義母さまごめんなさい謝りますのでその壺だけはぁ!!
……的な小説散文。いかがでござ(以下省略)
これはもう謝り倒すしか…なモノですね、コレ。
でも、…んでも書いておきたかったんですよ!!(泣)
…タイトル通り「話半分」で読んでくだ…さ…!



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