世の中にはどうにも理解できる範囲内の人間とそうでない人間がいる。 理解出来る人間となら軋轢なくお付き合いできるモンなんだろうが、 もし惚れてしまった相手がその「範囲外」の人間だったら。 かなり……悲惨だ。 カンバセイション04 ガンッガンッ!! テレビを見ながらうとうとしているとドアをノックする音で目が覚めた。 …いや、一般的にアレはノックとは言わねえでどついてると言うんだが、 アレをしている人間はそれがノックで当然だと思ってるからアレはノックってことにしてる。 まあ、ノックと言いつつ鉛仕込まれた安靴でドア蹴っ飛ばしたり持ってる物の角で叩いたり、 あまつさえ開けないと得物持ち出したり魔法使ったりしてドア破壊するのは俺の知る人間の中で一人しかいねえ。 スコールだ。 「だあぁ!!うっせぇえ!!!」 怒鳴りながら勢いよくドアを開けると何かをぶっつけられて目の前が急に真っ赤になる。 スコールがいるもんだとばかり思って油断していたせいか避けきれずにもろに顔面で受けた。 「おわっ!んだこりゃ…くま?」 いきなり視界を奪われてびびったが、気を取り直して見るとくまの縫いぐるみ。 しかもすげぇでかい。 そのでけえくまがうごうごと動いて声を発した。 「さっさと入れろ、サイファー」 正確にはそのくまを抱えたスコールだったらしい。 ぐいぐい顔面に押しつけてくる。 痛えんだよ主に鼻が顔に当たって! 「やっぱりスコールか!何だこのでっけえくまは!!」 「ん、あんたへのプレゼント」 にっこりと笑って俺に手渡そうとするその「プレゼント」は俺の上半身ぐらいありそうなでかいテディベア(って言うのか?)で 柔らかそうなファーで作られててご丁寧に首にでっかいリボンとかついててそいでもって、色は赤。 これでもかってくらいすこぶる真っ赤だ。 ………この、目の前にいるスコールと言う男は何故だかひたすら俺の嫌がることばかりして来やがる。 以前はそんなことはなかった筈なんだが… 魔女のことでごたごたがあって以降、俺にだけこうだ。 けど俺はそんなスコールに何やら恋心みたいなものを抱いちまって しかも最近ついに愛の告白とやらをしてしまった訳なんだが。 コイツは「それはめでたい」しか言わねえで仕事を始めて。 しかもそれ以来そのことに関して何も言わねえ。 ただ嫌がらせがかなり…エスカレートしやがった。 「……また嫌がらせかよ……」 「嫌がらせとは失敬な」 ほとほと嫌気がさして溜息を吐く俺にスコールの眉間の皺が深さを増す。 「こんな邪魔くせぇモンのどこが嫌がらせじゃねえんだ?あぁ?」 これがこんなでけぇしかも邪魔な場所取る暑苦しく可愛いもんじゃなければ喜んで受け取るけどよ、 俺が嫌いな物コイツ絶対解っててこう言うことしてやがる。くそ…っ。 「嫌がらせじゃない。あんたへの誕生日プレゼントだ」 「……マージーでぇー…?」 「何だそのテーブルマナー用に料理されたアイナメのような目は。俺から物を貰えること自体天文学的確率なんだぞもっと喜べ」 そりゃ…確かにそうだろうよ。 お前のケチ振りが世に響いて聞こえる程なのはよく知ってる。 でもよ…品物に問題がありすぎんだろ!! ああ…でもくそっ。 ケチ魔王のこいつが俺のために金使ってでけえくま買ってるとこ想像したら貰わねえ訳には行かねえよ… しかも何だ、俺の誕生日さり気に覚えててくれたみてえだし。 可愛いんだよ…くそおぉ!! っつーか俺をあのクソマズなアイナメと一緒にすんなサカナじゃねえ!!! 「…偉そうに言うコトじゃねえだろ…まぁ、お前がくれるっつーんなら貰っとくか…」 「そう、最初から素直に喜べばいいんだ」 受け取ろうと渋々手を伸ばすとスコールはふん、と鼻を鳴らしてそう言った。 だから…何でそう無駄に偉そうなんだよお前は。 何だその勝ち誇ったような笑みは。 つーか俺が惚れてて結局逆らえねえの解ってやってやがるから…手に負えねえよな…。 「うお、結構重ぇな。お前こんなでけぇのどこで売ってんだよ」 手渡されたくまを、さてどこに置くかと部屋を見回しながら聞くと悪びれもせずさらっと言いやがった。 「いや、さっきバラムのクリスマス福引き大会で当ててな。やる相手もめぼしいのがいなかったから捨てるよりはと…」 「やっぱ嫌がらせじゃねえかよッ!!つーかてめえの邪魔になったモン俺の部屋に捨ててくなって何度言やあ解るんだよ!俺の部屋は粗大ゴミステーションか!?」 そう捲し立てるとスコールが俯いた。 やべえ、言い過ぎたかな…なんて思いながら顔を覗き込むんだが、 ……笑ってやがる。 しかも、かなり腹黒く。 ………こええぇ!!!! 「……つーか、何で俺だよ。こーゆーモンは女子にやった方が喜ぶだろうが」 そう言ったら元の無表情に戻ってこっちを見たが、 さっきの顔は…マジこえぇ… ぜってぇ何か企んでやがった…企みの顔だあれは!! 「そうか?」 「そうなんだよ。セルフィとか喜ぶだろ、飛んで」 「いや、セルフィにはアーヴァインがいるから必要ないだろ」 「じゃあ今度来たときリノアにやれよ」 「リノアにはアンジェロがいるだろ」 「だったらキスティスにやればいいだろあいつだって一応女子だし」 「キスティスには俺がいるから」 「ああそう……じゃあやっぱてめえで持ってけよ俺はいらねえ」 「俺にはあんたがいるだろ」 「…は?」 「だから、これはあんたのものだ」 「えーと…スコールさん?」 「何だ」 上目遣いでぴこ、と小首を傾げてみせる。 く……騙されるな、俺。コイツは自分の容姿とか解っててこういう動きをするヤツなんだ。 わかってる……わかってっけどよ… くそぉ……可愛いじゃねえか………。 ってそうじゃなくてよ。 「その場合俺にもお前がいるからそいつはいらねえ。ってことになりませんか」 「ならん」 即答か。すっぱりか。 オレに対する気遣いとかも皆無か。 それともアレか、期待持たせて突き落とすという新しい嫌がらせか。 つーか、お前との会話は禅問答か南泉斬猫とかなのか!? ……はあぁ……。 「……………てめえが何を言いたいのかさっぱり解らん」 「それは心外だな。じゃ、仕事に戻るから」 「ってオイ!!こいつ持って帰れ!!」 「いらん。そんな馬鹿でかいモン」 ちらっと俺の持つデカブツに目をやったあとヤツはそう吐き捨てて踵を返す。 オイ、その心底嫌そうな顔は何だ。 やっぱりオレの部屋を物置とかと勘違いしてやがるだろ!! 「くっしょ、てめえ!このまま置いてったら俺は毎晩こいつ抱き枕にしててめぇ想像ながらピ──てピ───るぞ!!」 マジでやるぞ、絶対やってやるぞ。 そんでもってピ──まみれのこいつをテメエの部屋の前に放置すんぞ! 「それは愉快だな。やるときは是非呼んでくれ」 暫く考えるような素振りを見せたあと、 またもニヤリと腹黒い笑みを浮かべてヤツは部屋から出て行った。 「いい暇潰しになったな」とか何とか言いながら。 「…………………」 何で俺…あいつなんかに告白しちまったんだろう… このままじゃこれをネタにいびられ続けること確定じゃねえか。 まあでも、惚れてんだよな… 黙ってればめちゃくちゃモテるとことか、 嬉々として得物ぶん回してるとことか、 言動が主に奇天烈なとことか。 告白した言葉に嘘は絶対ねえ。 俺はどうしようもなくあいつに参ってる。 貰ったモンはどうしようもないが、俺の誕生日を覚えててくれたことが心底嬉しいぐらい好きだ。 ほんっとーに、好きだ。 それでもやっぱり、まったくもって、あいつは訳、解らん。 2002.12.19 と、言うことでサイハーさんお誕生日述べるでございました〜。 このくまネタはかなり前からあったもので、書く機会をずっと伺っていたのであります。 やっとこ……うう。 スコ誕で述べるが書けなかった分、その悔しさも少々こもっております(笑) 久々のカンバセで上手く行くかと不安要素もありましたが、あまり深く考えずにガツガツ書きました。 ので、お馬鹿な文章になってしまい…申し訳ないです。特にサイハーさんがお馬鹿。 いや、愛故に(笑) 一部の下劣ネタはご容赦を(おい) 私述べるでは初のいわゆる「ジンガイ」なスコールさんでお送りいたしました〜。 上手く行けばクリスマスに……うにゃむにゃ(予定は未定)頑張ります。 ところでアイナメ…本当にまずかったっす……。 |