最近頓に思ってしまうことがある。

……何で俺はあいつに惚れたんだ?

傲慢自己中その上守銭奴。
職権濫用は日常茶飯事。

"好きになるのに理由なんかない"

そりゃ痛いぐらい解ってるんだがな。

一体、俺は何で惚れたんだ?


あんな、恐ろしいやつに。











カンバセイション04.5











ガンッ!ガンッ!!

思考の合間を縫って耳に響いたけたたましい音に俺は現実に引き戻された。
いや、実際にはこの騒音のせいで思考せざるを得なかったんだが。


ガンッ!ガンッ!!

また音が響いた。

ついでに言うと現在時刻は早朝の0530だったりする。
こんな時間に、こんなノックを (ちなみにこのノックをする人間は2人いたりするんだが、片方は任務のない日は1000まで部屋にこもっている。本人曰く「自主学習してるの〜」らしいが、ぜってぇ、寝てやがる)
しかも俺が今の今まで任務でこれから寝るっつーことを知ってるのは、俺に任務を振った人間。

今、俺の部屋のドアをご機嫌に踏みつけていらっしゃる御仁しかいねえ。




スコールだ。




ガンッ!ガンッ!!

そうこう思う間にも俺の部屋のドアは順調に破壊への一途を辿っている。
派手なのを一発ぶちかまされないうちに顔を出した方が賢明ってやつだ。

俺はダッチワイフ宜しく毛布の中で抱きかかえた何とも愛くるしいぬいぐるみ…
……あの野郎からのおたんじょうびプレゼントを解放し、どすどすとドアに歩み寄る。

「ッんだよ!うッせえな!!」

はっきり言って、寝不足の俺は怒り心頭だ。
怒鳴り様にドアを開ける。と、

「サイファーッ!!」

俺より怒り心頭な勢いのスコールが部屋の中にまさに「飛び込んで」来た。

「ッだあ!!」

間違いなく俺の鳩尾を狙いやがった鋭い肘を間一髪で躱すと、
ズシャァッといい音を立てて床を蹴り、スコールは体勢を立て直す。


…………恐ろしい野郎だ。


「サイファー」

あまりの恐ろしさに一定の間合いをキープしている俺に向けて
スコールはにこりと敵意のない笑顔を向けて来た。

…いや、可愛いんだが、その笑顔が一番こえぇんだよ…。

「悪かった、今のは弾みで」

「何が弾みだッ!てめえ嫌がらせも大概にしろよ!こっちは眠ぃんだ出 て 行 け !!」

「嫌がらせとは心外な。ちゃんと用事があって来たんだ俺は」

ムカつきをそのまま怒鳴りつけると、スコールは敵意のない恐ろしい笑顔のまま俺に向けてずいっ、と掌を上に向けた左手を差し出してきた。

「あ?何だ?」

胸元に差し出された手の意味がさっぱり解らねえ。
こいつは俺に何を求めてんだ?

革手袋の掌を見つめたまま暫し考える。…が、行動パターンのさっぱり読めねえこいつの意図することなんざ想像もつかねえ。
つくはずもねえ。マジで解らん。何だ!?
………お手…とかか!?

わけ解らんままその掌に右手を乗せてみる。

ぽふ

バシィッ!!

「いってぇ!」

乗せた途端にサンドイッチの要領で思いっきり挟まれた手を慌てて引っ込めた。
野郎はと言うと、何か馬鹿にしたようなムカつく視線を投げてきたりする。
そいでもって、またもや手をずいと押しつけてきた。

「サイファー、クリスマスプレゼントをくれ」

………………あ?
今、こいつ。
にっこにこしながら何言いやがった…クリスマスプレゼントだと?



「はあ!?」

「俺は誕生日プレゼントをやっただろう。お返しにクリスマスプレゼントをくれ」

「またてめぇは……」

確かに今日は25日だがよ、
んなこたどうでもいいっつーかそれだけのために昼間でもいいことをしに来たのかこいつは…!
やっぱ嫌がらせじゃねえかよ!!

…………なんつー文句をこいつに吐いても不毛に話が拗れて行くだけだから言わねえことにして。
学習したんだよこれでも。
逆らわないのが一番無難なんだよな…。

「あー、わぁったよ、んで何か欲しいモンでもあるんか?」

これで現金とかつったら追い出すぞ、ぜってぇ追い出すぞ。
そもそもこいつは金に執着し過ぎてんだよ。
そんなに金貯めてどうすんだよ。札束で家でも建てようってのか?

「あのくまをくれ」

「……あ?」

「あんたにやったあのくまだ。あれをくれと言ったんだ」

「……そう言われてもなあ……」


実は、スコールに宣言した通り俺はあのくまを抱き枕にして寝てたりする。
誰にも言ったこたねえが、俺はああ言う毛足の長ぇ肌触りのいいモンに目がねえんだこれが。
あのくまのおかげでこの2日間快適に睡眠させて頂いているから手放したくねえんだよな…。

「何だ、もうピ───ったのか?」

はっきりしない態度でがりがり頭を掻く俺に焦れたのか
スコールがベッドの方を覗き込みながらすげえことをさらりと言ってのけやがった。

「しねえよ!!」

………俺はそこまでするとは言ってねえぞ!!

「なんだ」

あからさまにがっかりした顔すんな!!
こっちが恥ずかしいっつーの!!

「俺に押しつけたのお前だろが。何を今更…」

「嫌か」

そう言ってちょっと縋るような目で見つめて来やがる。


うっ………
いや、騙されるな、俺!!
あれもこれもこいつの演技なんだ!

そうだ、多分俺が抱き枕に使用してるってのをセルフィ辺りから聞いたに違いねえんだ。
(男が寝てる部屋に堂々と入ってくるセルフィもセルフィだがよ)
そいでもって活用してるのが嫌がらせにならないから今度はそれをぶんどろうって魂胆なんだ!

くそっそんな何でもお前の思う通りにしてたまるかよ!

「嫌だね。アレはもう俺のもんだ」

「じゃあ、あれの代わりに俺をやると言ったら?」

「…………………………へ?」



今、この野郎、何と言いましたか。
俺にはちょっと理解できません神様。

それともああそうか、嘘か。俺が狼狽えるのを見てまたすっぱり斬るつもりだなこの野郎は。

「俺をやるから、くまをくれ、と言っている」

錯乱してる俺が本当に理解できてねえと解ったのか、
スコールは自分とベッドルームを交互に指さしながら言う。

そういうちょっとしたジェスチャーも可愛いんだけどもよ、
…あああ、頭痛くなってきた。


「ちょっと待て、そりゃどう言う」

「くれるのか、くれないのか?」

変わった声色に抱えていた頭を放してスコールを見ると、
すげえ久し振りで見る真剣な眼で見つめられた。



……何でお前がそんな顔するんだか。
お前に惚れてるのは俺の方で、結局、どうしたって逆らえないことぐらい知ってんだろうに。

「あー…わぁったよ、ほれ、メリークリスマス」

「…どうも」

ベッドルームに入ってくまをドアに放り投げると、スコールはでかいそれを抱えて…
ちょっと俯いた。

その様が妙に可愛い。

「やっぱ俺よりお前が持ってたほうがいいんじゃねえか?そのくま」

どうせ振り払われるんだろうなーとか思いながらがしがしスコールの頭を撫でる。
が、いつもなら冷たい視線を浴びせて来るスコールが一向に顔を上げようとしない。
それどころか、

「そうだ。俺が持っていた方がいいんだ…」

そう言ってそっぽを向いちまった。


………は?





……………………あ。

何か、解った。
今、解っちまった。
こいつ、セルフィから抱き枕のこと聞いて、取り返しに来たんじゃねえ。

もしかして、もしかしなくても、こいつ、このくまに嫉妬してやがるのか!?
俺が、抱き枕にしてるから。


なんだこいつ、すっげぇ可愛いんじゃねえか。


それが解ればもうどうしようもねえ。
…にやけるしかねえっつうの!!

「…何だ?」

「いやぁー?くまの代わりにお前が添い寝してくれんのかな?とな」

スコールがしっかり抱きかかえたくまを取り上げて、部屋のすみに移動させながら
どうしようもなくやに下がっているだろう顔をスコールに向ける。

まさか了解するこたねえだろうスコールは

「了解した」

「ぅえっ!?おい!」

…まさかの一言を無表情で言ったかと思うと俺の腕を掴んだ。
すげえ力でベッドルームに引っ張り込まれてベッドに蹴り上げられる。

容赦ねえもんだから痛ぇケツをさすりながら振り返ると、
スコールがブーツと上着を脱ぎ捨てて隣にもそもそ潜り込んで来るところだったりして、


……わ、マジか…!?
なんだ、ええっと嘘から出た誠っつーんですかこれは、
それともまさか、ゆ、夢か!?

どすっ

痛ぇ…!
夢じゃねえ…!!!
…って痛ぇ?

視線を向けると、そこには毛布に虫みてえにくるまって俺の足を蹴るスコールがいた。

被った毛布を剥いでやってシーツに埋めたその顔を薄暗い中でよく見ると、赤面してたりして、

そいでもって、一言。


「寝るのか、寝ないのか?」

「…有り難く添い寝されて頂きます」


……つーか、やべえだろう。
可愛すぎる。
すっげー好きだ。
どうしよう。



ああ、恐ろしい。
こいつの恐ろしいところはこうやって何度も惚れ直させられることかもしれねえ…。



そう思って幸せに浸りつつ本格的に寝るためにスコールを引き寄せると、


「それじゃあサイファーは今日からキスティスのものって事で」

………すげえことを宣言された。

「ぬああぁ!?」

「だって俺があんたのものになったからあんたは俺の物じゃないし」

「待てぇ!どうなってんだお前の脳味噌の構造は!!」

「普通」









嬉しいやらどうしても理解できねえことが悲し過ぎるやら。
何だかもう諦めた方が早いって話かもしれないが、

何だかんだのクリスマスプレゼントで
















スコールは俺の物になった………らしい。




































2002.12.19


どっちかと言うと私が文章の書き方を理解してません!(爆)

もう…ず〜っと書き続けてようやく終わりました…
途中何度も04を読み返して…どうにもころころ文体が変わってしまうのでいけませんね…

カンバセ部分を書いたのは04と同じ日だったのですがこんなに遅く…
けれど「書くことに意義がある」をモットーに頑張ってこんなんなりました…!


ジンガイスコールも年貢の納め時かと思いきやまだダメでした(笑)
いや、途中書いていてどうしてもジンガイになり切れておらず、いつものスコールだったので…
慌てて終わりの方のごたごたを書き加えたという話なのですが。
カンバセ状態だとうまくジンガイしていたのですが間を入れたら可愛いスコールになってしまいましたよ…あわわ。

と、言うことで今更ですがクリスマスネタでしたー!(泣)





back--→